倫理

教育実践に、大いなる自信と疑問を持て

----- 贈り物をもらって、それに感謝しつつ、「物」で返さないのは、その分だけ「心」の関係を維持することになる。友人間の一心同体関係を強調するとなると、返す返さないなどは意味を持たない。とは言うものの、そこは人間の悲しさで、相手から何らかの返…

人の役に立ちたいと願う時にこそ、人間の能力が伸びる。

----- いま支配的な教育観は「自分ひとりのため」に努力する人間のほうが「人のため」に働く人よりも、競争的環境では勝ち抜くチャンスが高いという判断の上に成り立っています。私利私欲を追求するとき人間はその資質を最大化する。隣人に配慮したり「公共…

生命の畏敬のないところに教育は存在しない

----- 生命受難は政治の上から降りかかろうと、経済の上から降りかかろうと、その根は同じものではないかと思われて仕方ありません。かつて林竹二先生は教育の成り立ちにふれて、生命の畏敬のないところに教育は存在しないと言われました。 このことは教育に…

人間の寸法

----- 橋を見て、思いのほかきれいなもんやなぁと、クルーのひとりが言いました。 そんな人工美がないとはいえないけれど、私はそんなことより、地球から生えてきたものと、どんなに計算され強度を持ったものであっても人が作って地球の上に置いたものとの差…

怖くて外へ出られないという人がおられたら、外へ出られないというつらさを「共感」しながら聴いていく

----- ノイローゼといっても非常にいろんなものがありますけれども、日本の人がよくなるノイローゼに、たとえば対人恐怖症というのがあります。こういう所へ出てこられても、なにか人に会うといやだから、なるべく隅の暗い所へ座るとか、あるいはそもそもこ…

患者は物語をもって病院を訪ね、診断をもらって帰る

----- ところが、語りというのは上下関係がなくなってくるのです。一緒に面白い語りをしなければ帰ってしまいますからね。「告げる」の上下関係に対して、「語る」ということは関係がだんだん深まっていくのです。そういうことが非常にうまく書いています。 …

僕の教えたことが、それが誰かから教わったことだと気付かないくらいに、生徒たちの中に浸透していればいい

----- 教師と生徒が実際に接するのは、ほんの数年、それも一日のうちのほんの数時間かもしれません。だけど、この世に泳げない人がいるということに思いが及ばないくらい、当たり前のように今僕の身に付いていることは、かつて、先生に教えていただいたこと…

学びとは本来、新鮮な驚きが伴うもの

------ そもそも僕らが生きているこの世界には、想像を絶するぐらいのたくさんの情報が蓄えられています。そして、「学ぶことそのもの」を楽しむ人は、「目的意識」を動機づけにする人よりも、圧倒的に豊かな情報をそこから引き出し、自分の中に取り込んでい…

個性というのは自分で名乗るものではなくて、他者から与えられるもの

----- 内田 学生の就職活動の様子を見ていても、世の中には自分だけにしかできない「唯一無二の」適職がどこかにある、という幻想を刷り込まれていますね。俺は恋愛幻想と同じ構造になっている。仕事をする前に自分の適性や適職なんかわかるはずないのに、そ…

持っていくものは、「信頼」だけ

----- 刑務所には決して起こしてはならない三大刑務事故と呼ばれるものがあります。「自殺」と「火災」、そして「逃走」の三つです。 桐分校には10月と2月に施設内教育(遠足)があります。 受刑者は裁判所に出廷するときや移送されるときなど刑務所の外に出る…

「活動」することの重要性

----- 人間はなにを残すかではなく、いかに活動し享受し、また、他人を活動させ享受させるかという点で、意味があるからである。 (ゲーテ著、山崎章甫訳『詩と真実 第二部』「第7章」113頁、岩波文庫) ----- 「活動」することの重要性。 観念ではなくて、…

「わかりあえないこと」を前提に、わかりあえる部分を探っていく

----- しかし演劇においては、たかが数週間の稽古を経ただけで、あたかも家族のように、あたかも恋人同士のように、あるいはよく知っている劇団員同士でも、あたかも他人のように振る舞うことができる。 私たち演劇人は、ごく短い時間の中で、表面的ではある…

「ごめんね」「まあ、いいですよ」という言葉が交わされることを無数に積み重ねることによってしか国民国家のあいだのコミュニケーションは構築されてゆかない

----- 一人の国民は、その国を代表する。 その国を代表して、他国民を糾弾する権利があり、他国民を許す権利があり、他国民の前にうなだれる権利がある。私は国民国家というものは、そのような一人の国民の「代表権」の幻想のうえにおいてのみはじめて健全に…

よかれと思ってやったことがとんでもない結末をもたらす

----- ひと口でいえば「世の摂理は人智をこえる」。よかれと思ってやったことがとんでもない結末をもたらす。とんでもない結末が人々を不幸にするかというと、それもひと口にはいえない。すべては「時間」がたたないとわからない―――そんな感受性にあふれてい…

教養は人の生き方であり、一人一人が自分の生き方を社会との接点を求めて考えていくこと

----- 教養とは何かという点について共通の理解がないためである。私はすでにこの問題について世に問うたことがあるが、そこでは教養は人の生き方であり、一人一人が自分の生き方を社会との接点を求めて考えていくことだとした。そしてこれまでの教養の理解…

この時期を利用し、新しい決心をすることもまた最も必要のことである

----- 今月(九月)は学生の学期も改まり、商人その他も避暑から帰り、すべて新しい時期を画するの基節なれば、この時期を利用し、新しい決心をすることもまた最も必要のことである。 昔の我が国には、正月の三ケ日、雛の節句、端午、その他いろいろな記念日…

人の心が分かる心を教養という

----- 人間科学の講義で、今年は最初に、個性だの自分だのと、若い未熟な人間がバカなことを考えるなと、はなはだ乱暴なことを語った。それより自分の友だち、親兄弟の気持ちがよく理解できるほうが、よほど人生が豊かになるのではないか、と。私は他人の気…

われわれは他人に迷惑をかけなければ、何もできない

----- わが子が世間的に成功している場合―――とくに親のあとを継いで立派な学者や役者や政治家になった場合―――親たちはほとんど人間としてのまともな感覚を失った道徳的エゴイストに変身する。そして、例えば「何でもしてよい。だが他人に迷惑だけはかけるな…

「師匠を持たないものは敗れる」

----- 「師であることの条件」は「師を持っている」ことです。 人の師たることのできる唯一の条件はその人もまた誰かの弟子であったことがあるということです。それだけで十分なんです。弟子として師に仕え、自分の能力を無限に超える存在とつながっていると…

「親しみが感じられ、敬意を抱くことのできる北朝鮮の人」と個人的に出会う経験

----- 日米関係は現在友好的に推移しているが、その最大の理由はアメリカの世界戦略と日本の国益のあいだに密接なリンゲージがあることよりむしろ、日本国民のかなりの数が、実際に日常生活の中でアメリカ人と知り合い、そこで親しくかかわった経験を持って…

「民族」は、人間社会を喰い尽くすタチの悪い病

----- 森巣 えー、不肖、浅薄な知識の博奕打ちが、東京大学社会情報研究所の姜尚中教授の前で、不遜にも、私が考えてきた「民族」という名の病にかかわる報告を発表させていただきます。タイトルは、「民族幻想の正体」。 姜 よろしくお願いします。 森巣 は…

集合体は、組織的な個人の人格性の抹殺の上に成り立ち、共同体は互いに向かい合うことによる人格性の高揚とその確認の上に成立する

----- 対立する世界にたいし望ましい制度の改革を求めて、共通の認識、共同体の意識なくして闘うところでは共同体の志向する精神は存在しない。共同体の志向する精神が成立するのは、現実をめぐって共同体自身の内部から生ずる闘いがなされるところである。…

私は何よりも先ず子供の信頼と愛著とを贏ち得ようとした

----- 一八 子供は自分の愛するものは何でも欲する。彼に名誉を齎すものは何でも欲する。彼の大きな期待を鼓舞するものは何でも欲する。彼に力を與へるもの、「僕にはそれが出来る」と子供に言はせるものは何でも欲する。 併しかうした意欲は言葉に依つて生…

真の共同体は、人間の生き生きとした相互関係から創られる

----- 真の共同体は人々が互いに感情をもっているからといって成り立つものではない(むろん、感情なくしては、現実はあり得ないが)。むしろつぎの二つのことによって成り立つ。すなわち、真の共同体はすべての人々が生きた中心にたいし、生き生きとした相…

つらさよりも子どもを育てる喜びのほうが大きいから、子どもを育てる

----- じつは経済学は、人間は利己的なものだと考えているわけではありません。単純化のためにそうしているだけのことで、自分のことだけを考えているのが人間だとみなしているわけではないんですね。 つまり、経済学は、人間が利己的であるべきだ、という価…

どんなにしんどいこと、つらいことにもそれなりに学ぶべきことはある

----- 相変わらず花粉症がしんどい。いくらかんでも鼻水が出る。くしゃみの連続。涙が止まらない。しかし、どんなにしんどいこと、つらいことにもそれなりに学ぶべきことはある。これら花粉症の症状は、私の免疫系が襲来するスギ花粉を何とか身体から排除し…

先生方、寝てください

----- 最後に、先生方、寝てください。教材研究が多少中途半端でもいい、生徒指導でいろんなことがあるとしても、明日は明日の風が吹きます。そして、翌朝には元気に学校へ来て、子どもたちに「おはよう!」と声をかけてください。これがどんなに大事か。家…

みなが同じ地球上に生きる「地球市民」だという意識

----- アメリカ合衆国で発生したリーマン・ショックは世界を駆け巡って各国の経済に多大な影響を与え、その結果がまたアメリカの政治や経済をゆるがしている。インターネットに国境はなく、テロリストと呼ばれる集団も、国単位で活動しているのではない。つ…

一瞬にして「敵はいないよ、安全だよ」と知らせ、仲間たちの緊張と不安を和らげてあげるためのサイン

----- 笑いの起源について、進化論を発表したチャールズ・ダーウィンは、非常に重要な仮説を打ち立てている。かの「偽の警告仮説」である。 「笑い」は、動物が群れをなして生活するなかで、仲間同士の「伝達=コミュニケーション」の必要性から生まれたとい…

戦争ほど悲惨なものはない【沖縄旅行記(1-1)】

----- 戦争を可能にする病理とは、観念が実現するという思い込み、つまりウィッシュフル・シンキング、現実を否認する思考だ。その否認される現実の中に、旧日本軍の場合は「兵士が肉体を持つ」という事実が含まれていたようだ。 日本軍の体質にそれがあっ…