真の太医は国の患いも医す

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「まだ、それがしをお疑いか。医は人間の病をなおすことのみが能ではない。真の太医は国の患いも医すと聞いている。わたしくに、それほどの力はないが、志はあるつもりなのに、意志の薄弱な長袖者と思われておつつみあそばされるか―――」
 そう嘆じると、吉平は指を口へ入れて、ぶっと喰いやぶった。そして、他言はせぬという誓いを、地をもって示した。


吉川英治三国志(三)』「臣道の巻」333頁。講談社)

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を読んで、ふと頭に浮かんだことが・・・

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「お前もおれも…追われる身ってわけだ
お互い苦労するなァ おい はみ出し者ってのは!
…だが恨むなよ人間を」

「!」

「この国は今“病気”なんだ
国民もそう王も政府もそうだ
人の心は今病んでいる
“病気の国”の治療などできるもんかと人は言うだろうがそれは違う
聞けチョッパー こんな話がある!!
遠い西の国に一人…大泥棒がいた
そいつは心臓に重い病を持っていたんだ…
だが幸運にも金はある…
ありとあらゆる名医を尋ね回り治療を受けたが
誰一人その病気を治すことはできなかった
“不治の病”ってやつだ
ついに死を宣告され 苛立ち荒れる男は通りかかった ある山で
見たことのない 息をのむ程の美しい風景を目にした…何を見たと思う

桜だ

山いっぱいの鮮やかな桜を見た…!!!……そして再び医者にかかって男は驚く…
こう言われたからだ
『まるで健康体だよ』と…
治ったんだ!!
これが“奇跡”…!!!
確かに“奇跡”だ!!
だがそうじゃない!!
これは立派な“医学”だ
感動によって男の体に何らかの変化がおきた
現に治らなねェと言われた病が治ったんだ すごいだろう!?」

「…………!!」

「つまりこの世に治せねェ病気なんてねェのさ!!
おれのおとを誰がどう言おうとも
おれはこの国を医者として救ってみせる!!
だから全ての病気におれは この『ドクロ』をかかげたのだ!!!」

「ドクロ………」

「そうさコイツはな!!
不可能をものともしねェ
“信念”の象徴だ!!!
これをかかげ海賊のようにおれは戦う!!」


尾田栄一郎『ONEPIECE』巻16「第142話“ドクロと桜”」117頁−120頁。集英社)

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改めて
『ONEPIECE』が漫画の域を越えていることが分かった気がする。
尾田栄一郎氏、ヤバいっす!


三国志(3)(吉川英治歴史時代文庫 35)

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ONE PIECE 16 (ジャンプ・コミックス)

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