「いつもただつぎのことだけを」考える

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 「なあ、モモ、」とベッポはたとえばこんなふうにはじめます。「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。おそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」
 しばらく口をつぐんで、じっとまえのほうを見ていますが、やがてまたつづけます。
 「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。ときどき目をあげて見るんだが、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて、動けなくなってしまう。道路はまだのこっているのにな。こういうやり方は、いかんのだ。」
 ここでしばらく考えこみます。それからようやく、さきをつづけます。
 「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな? つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸(いき)のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
 またひと休みして、考えこみ、それから、
 「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
 そしてまた長い休みをとってから、
 「ひょっと気がついたときには、一歩一歩すすんできた道路がぜんぶおわっとる。どうやってやりとげたかは、じぶんでもわからんし、息もきれていない。」
 ベッポはひとりうなずいて、こうむすびます。
 「これがだいじなんだ。」


ミヒャエル・エンデ作、大島かおり訳『モモ』「4章 無口なおじいさんとおしゃべりな若もの」52-53頁、岩波少年文庫

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以前から気になっていた『モモ』ですが、先日購入し、読んでいます。

とても面白いです。

主人公の少女も不思議な子で、あらゆる人の話を聴くのが得意で、話ししている人は不思議と幸福な気持ちになる。

そこへ、人間の“時間”を盗む謎の男たちが街を襲います。

無駄な時間を節約し、余った時間を貯蓄するという話をもちかけ、人々の時間を奪っていく。

それによって、人々は、せかせかと働き、不愛想になり、いつも時間のことを気にして、いらいらしているようになる。

無駄な時間を過ごさないように。

謎の男たちは、そうした人間から時間を奪い、生きていけるのだそうです。

そして、人間たちを支配しようと企んでいる。

そこで、不思議な少女「モモ」が街を救うために、動きだします。


“時間”ってなんだろう。

改めて考えてみるのも面白いですね。


物語も終盤まできました。

一気に読みたいと思います。


ps,
教員採用試験の出題範囲も広く、勉強しても成果が見えず、先の見えない日々ですが、
一歩一歩、次の問題へと挑戦していくことが大事なんですね。
1ページ、1ページ地道に積み重ねていくことで、自身の血肉となっていくので、
今はどこにいるのか、どこまで来たのか、どのくらい進んでいるのか、今は分からなくとも、とにかく“次の一歩”を踏み出していこうと思います。


pps,
ホント偶然ですが、もうすぐ公開の映画『TIME/タイム』
予告編を見てみると、同じような内容かと…。
気になりますね。


モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))