子どもたちに名作を与えておきながら、自分が読まないのは犯罪だよ

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 教師も親も子供の成長のために何かをするよりは、じっと見守ることの大切さを毛利さんは指摘され、私のエッセイ『おはなし おはなし』のなかの「ただ座っていること」の難しさに触れた部分に言及される。教師が子供に何やかやとしたり言ったりするときは、「子供のためと思っているけど、自分の心配をとるため、自分のため」という指摘は、そのとおりだと思う。
 毛利さんが、医者として「型通りに診察しよう」としない、と言われたのはさすがと思う。教育でもこちらのもっている型にはめようとすると駄目で、生きている子どもを中心に考えていかないと駄目である。大人はどうしても自分中心に発想してしまう。そのくせに、自分の面白い本を子どもに読まそうという発想がでて来ないのは困ったことである。「自分が面白くないのにこれを読めというのは、犯罪だよ、もう」という毛利さんの言葉は痛快である。
 私も冗談まじりに、学校の先生に読書感想文を書かせたらいいなどと言っているが、学校の先生たちの読書量の少ないのには驚かされたことがある。たまに先生方の研修などに出かけて、児童文学の名作をあげて、読んだ方は手をあげて下さいと言うと、ほとんど手があがらない。「おそらく先生方の教室の学級文庫にありますよ」と言うのだが、毛利さん流に言うと、「子どもたちに名作を与えておきながら、自分が読まないのは犯罪だよ」と言うことになるだろう。
「子どもたちはファンタジーを求めている」というのは毛利さんの言葉であるが、現在の子どもたちにふさわしいファンタジーを書くのもなかなかのことと思う。ミヒャエル・エンデの『モモ』は日本で百万部売れたとかで、さすがと思うが、日本人の作家からこれはと思うファンタジーがなかなか出て来ないのは残念なことである。期して待つべしというところであろう。
 最後に、毛利さんは御自分の体験から「おじさん」のことを言い出され、前思春期あたりで「親にはなかった人格と接すると非常に幸せだ」という話をされる。これも大切なことだ。前思春期くらいになると、そろそろ親離れが始まりかける。そこで、親に少し反撥を感じたり、それまでは親の言うことはすべて正しいと思っていたのに、疑問が生じてきたりする。さりとて、親から離れてしまうのは不安である。そのために、どこかで親と通じるところがあって、親の代理のようでありながら親とは異なることを言う人が必要になってくる。毛利さんの場合は、それが「おじさん」だったわけである。一昔前は核家族ではなかったので、そのような類の人が子どもの周囲によく居たものである。今は核家族になっていいこともあるが、ここに述べたような点ではマイナスになっている。親子だけでいつも顔をつき合せていると息づまりがしてくる。そこで少し息抜きのような人物が必要と思われる。


河合隼雄『こころの声を聴く』「10 子供の成長、そして本」【対談のあとで】304-305頁、新潮文庫

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子どもの成長にとって、ファンタジーは不可欠のものであって、子どもたちも本能的にそれを求めているのでしょう。

親の代わりに親戚、先輩、先生などの人物と接するなかで、健全な成長に繋がるということですが、現代では、なかなかその機能がうまく発揮されていないようです。

その代理となるのが、児童文学だと。

今の子どもたちにとって、ますますその重要性は増してくるのではないでしょうか。

人間関係の希薄化が進む中で、現在は、その改善を試みている動きはあると思いますし、それを自分自身が教師になった時に、どのように働きかけていくのか、考えていかなければなりませんが、

まず、児童文学の世界から学ぶことは多々あるのは確かでしょう。

まず、自分自身が読んでいきたいですね。

子どもたちに本を薦めるといっても、ただ「読んだ方がいいよ」と言うのではなく、自身の感想を伝え、面白かったこと、感動したこと、学んだことなどを自身の体験を通して、伝えていくと、子どもたちも自然と興味を示し、進んで本に親しくなっていくのではないかと思います。

子ども同士で、外で元気に遊びまわることからも、子どもは育っていきますが、本の世界に入ることも、これまた大切な成長の一環だと思います。

三流の漫画本、雑誌、テレビゲームなどにハマるよりは、ましでしょw


ボク自身も、小、中、高と、遊びまくって、野球やバスケに没頭していましたが、それもイイ経験となりましたし、
大学では、よき師、先輩に恵まれ、良書に触れることができました。

独り暮らしは未経験ですが、親も忙しい身で、小さい頃から留守番の日々でしたし、その分、親戚や従兄弟、近所のお兄さんらが身近にいたので、有難い環境に生まれてきたと思います。

「地球に生まれて良かったー!」

この感謝に応えるためにも、自身が社会で実証を示していきたいと思います。


こころの声を聴く―河合隼雄対話集 (新潮文庫)

こころの声を聴く―河合隼雄対話集 (新潮文庫)