いくら理想を掲げても、現実には崩れることもあるでしょう。だからといって諦めたり、最初から理想を持つことを放棄したりしてはならない

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 ただし、教師には2つ、ぜひ心に留めてほしいことがあります。たとえば親は、もしも自分の子どもに矢が飛んできたら、きっとわが身を前面に出してでも子どもの命を守ろうとするでしょう。愛情ってそういうものですよね。教師は親とはちょっと違うけど、子どもたちのためなら犠牲になってもいいというくらいの気概を持ってほしい。子どもたちを連れて山に登ったら、僕は一番最後に降りていきます。教えるときは前に立ちますが、教師のリーダーシップは気持ちの上では後ろに立つこともあっていい。自分が教える子ども達の安全を見届けるため、最後尾につく気持ちをぜひ持っていてほしいのです。
 そしてもう一つは、理想を持つこと。こういう理想的社会をつくるんだという高い理想をしっかり持って教育に携わってほしい。いくら理想を掲げても、現実には崩れることもあるでしょう。だからといって諦めたり、最初から理想を持つことを放棄したりしてはならないと思います。教育界では、たとえば終戦直後は、「子どもたちを二度と戦場に行かせない」という理想を掲げた教育者も多かったでしょう。
 僕の今の理想は、自然との共生です。たとえば原発は自然に対する破壊だから、絶対に許してはならないというのが持論です。福島原発の近くに、一度目は1人で、二度目は希望した子どもたちを連れて行ったのですが、その際に、この思いを強くしました。教師になる皆さんには、野良犬が走り回っていたり、人がほとんどいなかったりする町に行って、現地を見て、空気を吸ってみてほしい。そこで何を感じるか。現物に触れることで、考えたり、共感したり、いろいろな考え方が生まれたりする。普段からその姿勢は大切にしてほしいし、教師になる人にはぜひ一度、福島に足を運んでほしいと思います。

(渡辺憲司『教員養成セミナー 2012年5月号』「巻頭インタビュー 教師のチカラ」時事通信社

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友だち先生になってしまうと、子ども同士の付き合いや、進級、進学、就職した際の人間関係の形成に困難が生じる可能性もなきにしもあらず。
優しくて仲のいい先生って、いい感じに見えるけども、それだけではない。自分も気をつけなければならないっす;

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 最近の子どもたちを見ていると、依存体質の子どもが増えているように感じます。これは、少子化からくる過保護が主な原因と考えています。そういう子どもたちに、先生が何でもやってくれることを教えてしまうと、人間関係づくりまで誰かにやってもらうものだという思いが定着してしまいます。これでは、将来に禍根を残します。
 先生として、目の前の子どもたちと一緒にいられる時間は、ごくわずかです。彼らが将来、人間関係づくりにつまずかないためにも、自分たちの力で人間関係をつくる練習をさせていく必要があるのです。そのためには、ケンカや仲間はずれの問題が起きない限り、見守ることも大切なのです。

(寳迫芳人『子どもの力を引き出す学級担任』「第2章 子どもたちとつくる学級」75頁、ナツメ社)

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で、最初に引用した渡辺先生、
昨年の3・11後の立教新座中学校・高等学校の卒業生へのメッセージは、ネットを通じて大反響でした。

ボク自身も感動しました。

先日、理想と現実についてちょっと書きましたが、見事、渡辺先生がうまくまとめて答えております;
「いくら理想を掲げても、現実には崩れることもあるでしょう。だからといって諦めたり、最初から理想を持つことを放棄したりしてはならない」っちゅうことですわな。

ボクも4月から教壇に立つ一人として、理想を掲げて臨みたいと思います。


ps,
日本は、どこにいてもある意味危機的状況ですが、福島の場合は現時点でその最たるものだと思います。
“今いる場所”が使命の地と自覚していますが、一度は福島へ行ってみたいと思います。GWか・・・。
やはり、現地を実際に見ると見ないとでは、違いますね。
昨年、わが県も大豪雨の被害を受けた地域があり、実際ボランティアで片づけ作業をしてきましたが、テレビ画面で見るのとは全然違いました。
実際に、“現場に行く”。これが“運動”なんですね。
現場に入るか入らないかで、危機感も違ってきますし、その危機感が創造力の源となる可能性も十分あると思います。

第二次世界大戦直後の東京の焼け野原に一人立たれ、日本の、世界の平和の再建を決意した先人もいるわけですし、一人の人間の強い想いが、やがて国を変えていけるだけの力になるのも事実ですから。

現場第一で動ける人。そういう人にボクはなりたい・・・。


教員養成セミナー 2012年 05月号 [雑誌]

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