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効果があればやる、効果がなければならないという考え方は合理主義といえるでしょうが、これを人間の生き方にあてはめるのはまちがいです

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「はい」
大きな声出した。足立先生だ。
「ヤジがとばせないので苦しい」
みんな大爆笑だ。
「村野さんはまちがったことをいっているので訂正しえおく」
足立先生は高飛車にいった。そういうものの言い方と、ようしゃのないところが煙たがれるところだろう。
「さきほど治療ということばを使われたが、胃が悪いから治療するという意味の治療だったら、村野さんはなにか勘ちがいをしているか、それとも無知かどっちかだ。大脳の細胞、つまり神経細胞が再生しないことぐらい中学生でも知っている事実で、ちえおくれの子どもの教育はそこがほかの教育とちがうところだ。村野さんは、なにが身につくんですかと反問されたが、その考え方が、こんにち精薄児教育のもっともまちがった考え方とされているのをごぞんじか。ドイツのビーフェルトに誕生したベテルで、ちえおくれの人たちと一生をすごしてきたある白髪の修道女がこういったんです。『効果があればやる、効果がなければならないという考え方は合理主義といえるでしょうが、これを人間の生き方にあてはめるのはまちがいです。この子どもたちは、ここでの毎日毎日が人生なのです。その人生をこの子どもたちなりに喜びをもって、充実して生きていくことが大切なのです。わたしたちの努力の目標もそこにあります』村野さん、このことばをわれわれ教師はじっくりかみしめて考えんといけません。小谷先生はたぶんこの話は知らないはずだ。しかし、小谷先生がやってきたことは、このことばそっくりじゃないか」
 
 
灰谷健次郎 『兎の眼』「14  泣くな小谷先生」181-182頁、角川文庫)
 
 
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灰谷健次郎『兎の眼』読了。
様々な生活環境、家庭環境で暮らしている子どもたち。その保護者。背負うものはそれぞれみな違うが、大きなものを背負って生きている。越えるべきものから目を逸らさず、離れようとせず、マイナスをマイナスと捉えず、成長の肥しとしていく。
子どもたち、親たちにとって、意味のある教師であるための覚悟を小谷先生から学ぶ。

 

 

兎の眼 (角川文庫)

兎の眼 (角川文庫)