このイードラの恐ろしさは、極度にマスコミが発達した今日においては、当時のそれ以上であることを忘れてはならない
-
-
-
- -
-
-
時は十八世紀後半、ドイツ啓蒙主義の爛熟期である。ドイツ国内では、理性に対する信頼は頂点に達していた。宗教や政治などのあらゆる権威が理性の吟味に付される時代である。吟味に付されるということは、まずは疑われるということである。学問といえどもその例外でなく、哲学はもちろん、とりわけ形而上学もそうである。ということは、皮肉にも、結果的に理性に対する信頼自身も疑われることになる。少なくとも、理性に対する過度な信頼は早晩、疑われる運命にあった。
そのような時代の中で、カントが『純粋理性批判』第二版の冒頭に新たにモットーとして揚げたのは、イギリス経験論の草創者フランシス・ベーコン(1561-1626)の『新オルガノン』からの引用であった。引用されたのが合理主義者のモットーでなかったということはすこぶる象徴的な意味をもつ。この書においてベーコンは有名な四つの「偶像(イードラ)」をあげ、それらを克服することが学問の発展はもとより、人類の発展を実現すると提唱している。「イードラ(idola)」とは、もともとギリシャ語で「エイド―ロン」、すなわち「先入観」「偏見」「見かけ」等を意味する。その四つのイードラとは以下のとおりである。
1 そもそも人間一般の本性に固有のイードラ、すなわち人類に共通のイードラ。これは「(人間という)種のイードラ」と呼ばれ、人間が人間であるかぎり、どうしても避けることのできないイードラである。その昔、全人類が一致して、太陽をはじめ全天体が地球のまわりを回っていると考えていたのは、その代表例である。
2 人間各個人によってそれぞれ異なるイードラ。これは「洞窟のイードラ」と呼ばれる。これは、各個人の性格や生いたち、境遇からくる偏見で、「井(洞窟)の中の蛙」が、その狭い世界を全世界であると思いこむことに象徴される。
3 言語による情報をはじめ、社会的生活から生じるイードラ。これは「市場のイードラ」と呼ばれる。その昔、毎日の情報源は人々がよく集まる市場だった。そこでは根拠のない噂やデマが飛びかったであろう。ただし、このイードラの恐ろしさは、極度にマスコミが発達した今日においては、当時のそれ以上であることを忘れてはならない。
4 大掛かりな仕掛けによるイードラ。哲学をはじめ、もろもろの学問的理論が生みだすイードラ。これは「劇場のイードラ」と呼ばれる。劇場の大道具装置(たとえば、背景に描かれた富士山)が実物であるかのように見えるのと同じで、たとえ空虚でまちがった学問体系も、その難解な理論ゆえに人を威圧し、真理を語っているかのように映る。
このように、ベーコンは、一般に知性(理性)がいかに誤謬におちいりやすいか、それだけでなく、本性的にいかにみずから誤謬や見せかけの真理を生みだしがちか、したがっていかに欺瞞的であるかを説いている。これによって彼は、知性にではなく経験に真理のよりどころを求める。知性はなるほど世界を映しだす鏡かもしれない。しかしそれは歪んだ鏡であり、物をみずから着色して映しだす鏡ですらある、と。これはまぎれもなく理性批判の先駆である。カントがベーコンの言葉を『純粋理性批判』第二版のモットーとして掲げたのは、そのことを自覚していたからにちがいない。
(石川文康『カント入門』「第1章 純粋理性のアイデンティティー」16-19頁、ちくま新書)
-
-
-
- -
-
-
12月に入ってなにかと忙しくなってきましたね。
色んな人に話を聞くと、あらゆる業界でこの12月に入って仕事内容も増え、忙しくなっているそうです。
世界各国での自然災害の影響もあるんだと思います。
じゃ、学童は・・・というと、
やはり、今までより忙しくなりそうです。
というか、やることが増えました。
まぁ、クリスマス会、大掃除など、年末の行事が迫ってきているっていうだけなんですが;
飾り付けやクリスマスカードを作らなきゃならんのです。
これも、いい経験ですね!
何事も経験から学ぶしかないです。
きっと将来に役立つでしょう。
仕事でもやること多くなってきたと同時に、プライベートでも何かと忙しくなってきました。
そんな中ですが、色んな本は読んでいこうと思います。
『三国志』を読み終えた今は、数冊同時進行です。
もちろん、教育関係の本も読みたいんですが、
哲学分野も興味があり、どうしても読んでしまいます;
しかし、今しか読めないものもあります。
来年、運よく、講師の仕事に就くことができれば、とても読書している時間なんて取れないと思います。
少なくとも、今のような読書生活はできないでしょう。
なので、そういった点からも、哲学系の本もかじっておこうと思いますw
難解ものですが、じっくりと自分なりに理解を進めていきたいと思います。
先哲にも影響を与えたというカント(1728-1804)。
理性批判とは、カント哲学とは、どういったものなのか、今更ですが、少し学んでみたいと思います。
最近、ブログのカテゴリが偏っているような・・・;
ま、いいかw
- 作者: 石川文康
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1995/05
- メディア: 新書
- 購入: 14人 クリック: 46回
- この商品を含むブログ (52件) を見る