「苔むした美しい岩」を見ているほうが、意外と本質だったりする

 

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茂木 そうですね。科学はどうも微妙なニュアンスを切り捨てるところから始まるんですねよね。

 われわれの業界で「モーション・アフター・エフェクト」、別の言葉で「ウォーターフォール効果」というものがあるんです。一方的に動いているものを見続けていて、そこから目を離すと、逆方向にものが動いているように見える。百数十年前にそれを最初に学術雑誌に投稿したイギリス人がいるんですが、その論文には、いまの科学の感じからすると余計なことが書いてあるんですよ。《私は苔むした美しい岩に目を止めていた。そのあとずっと滝を見ていて、そこから目を離すと、苔むした岩が逆方向に動いているのが見えた》と。それが「モーション・アフター・エフェクト」の最初の方法論のところになるんですね。

 ところがいまの科学は、「苔むした美しい岩を見ていた」とか、そんなのは関係ないよと、切っちゃうんですね。箱庭から砂を取っちゃうのと同じようにですね。

 でももともと科学は、そうじゃないんですよ。たった百数十年前の論文にはそういう余計なことが書いてあるんですよね。いまのガチガチの科学みたいに、ここまでピュアにやっちゃっているのって、最近のことかもしれない。

河合 そうかもしれませんね。おもしろいですね。

茂木 心の働きとしては、その「苔むした美しい岩」を見ているほうが、意外と本質だったりするわけですからね。でもいまだと、滝の水が落ちる速度は秒速何メートルだったかとかって書かないといけないわけですから。

 どうもやっぱり、河合先生のおっしゃるように、近代科学にはある種の倫理観というか、やるべきことが欠如していますね。人間の心、精神活動というのは、実験条件を厳密にコントロールして、再現可能なところにだけ顔を出して、検証するというアプローチがどうもなじまないんですよ。

河合 そうそう、なじまないんです。倫理的にもむずかしいですね。ところがそれがないために、それは論文としての価値が低いと思われるから、本当に困るんです。

茂木 そこをなんとか理論化すればいいんだよな。

 

河合隼雄茂木健一郎『こころと脳の対話』「第1回 こころと脳の不思議」65-67頁、新潮文庫

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先週金曜日、社会見学で三重県鳥羽市にある答志島へ行ってきました。

電車で鳥羽駅まで行き、そこから船で移動。答志島は小さな島ですが、だからこそ、そこで暮らす人たちの知恵や工夫が目につくのです。

島ではまず、ウォークラリーを通して、島の人たちと交流しつつ、各ポイントで問題に挑戦し、島の特徴を学習していきます。道に迷っても島の人に聞いて島を散策します。

その後、市場を見学。セリの時間には合いませんでしたが、取れたての様々な種類の魚を見学し、スーパーで売っている魚がどのようにして私たちの食卓に来るのかを学習しました。

お昼は海女小屋(観光用)で食べました。実際に使っている海女小屋は、台風の際に、すぐに片づけられるように、ブルーシートのようなものを張ってあるだけの簡単な造りになっているそうです。

午後は、シェルキャンドル作り。貝殻にロウを入れ、固まってきたと同時に蝋燭、小さな貝殻、ビーズなどの飾り付けをします。

子どもたちは皆、それぞれオリジナルの可愛いシェルキャンドルを作っていました。いいお土産になったと思います。

 

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自分たちの住む町と、海に囲まれた島での暮らしには大きな違いもあることを学び、そして、島の人とたちと温かい交流ができ、充実した社会見学だったと思います。

ボク自身も勉強になりました。

 

ps,

ある子のキャラ弁 が素晴らしかったということで話題になりました。

島の人も写メを取ってました。

お父さんが作ったそうです。

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pps,

先週から国語は「ごんぎつね」に入りました。

19日の公開授業では、この「ごんぎつね」で授業をします。

文学は「分かる」のではなく「味わう」ことに重点を置くことと教えられました。

子どもたち一人ひとりの感じ方が違いますし、それを出しつつ、一人ひとりがしっかりと作品に向き合ってほしいです。

「なぜ」「どうして」と疑問に思うことも大事かと思いますが、それだと、理屈っぽくなり、文学作品を味わい楽しむことができなくなります。子どもたちも理解しよう理解しようと頑張って、苦しくなる、窮屈になるということが起こってしまいます。

 

言うは易し、行うは難し。

 

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こころと脳の対話 (新潮文庫)

こころと脳の対話 (新潮文庫)