よかれと思ってやったことがとんでもない結末をもたらす
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ひと口でいえば「世の摂理は人智をこえる」。よかれと思ってやったことがとんでもない結末をもたらす。とんでもない結末が人々を不幸にするかというと、それもひと口にはいえない。すべては「時間」がたたないとわからない―――そんな感受性にあふれている。
これはアメリカ文化の伝統からくるものだ。ピュアであることを徹底して追求する伝統。ピュアであることの本当の意味はどこにあるんだろうというふうに、自分の足元に穴をほっていったら、意外にも地球の裏側につきぬけちゃった、みたいな感じがSFにはある。
そういうふうに、幸せの追求を徹底しようとするほど、「絶対にこうだ」とはいい切れない問題が出てくる。そういうところに、アメリカ文化と結びついたSFの伝統の「核」があるんじゃないかと思っている。
(宮台真司 『14歳からの社会学』「⑧ BOOK&MOVIEガイド SF作品を「社会学」する」228-229頁、ちくま文庫、2013年)
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何かの会話の中で、「『エリジウム』を観て来たよ」という先輩の話から、映画の話しになり、特にSFの話題になり、現代社会の諸々の問題を提起するメッセージ性の高い作品が多いという感じになりました。
科学技術の発達がもたらす影響は善くも悪くもどちらにも転び、それはやっぱり創造主である人間の人間性にかかっていると思います。
また、環境破壊、貧富の格差、さらに、生老病死という誰しもが逃れられない人間の根本的な問題について、SF作品は今を生きるボクたちに何かしらの問題提起を訴えているように思います。
「このままいっちゃうと大変なことになるよ!」と。
と、まぁ、そんなこんなで『エリジウム』を観たわけです。人間の理想や欲望、また希望、絶望など、様々な人間模様も観ることができるのも、映画の醍醐味であります。また、大迫力の映像、アクションシーンを愉しむことができますね。
不老不死は、SFにはよくある大きなテーマですが、それが「幸せ」につながるかといえば、そこにはまた問題が生じるわけで・・・。
永遠の命をもつ者(ロボット?)が限りある命の人間になりたいという願いをもつものもあります。それは、ロボットにはない、人間の持つ「人間性」に憧れることだと思いますが、隣の芝生は青いというのでしょうか・・・。
「人間とは何か」「幸せとは何か」という問題を考えつづけること。定義化することには問題があって、それはまずいと思いますが、でも、問い続けることは大切なんじゃないでしょうか。
気付いた時には手遅れにならないように。
「ターミネーター4」も久しぶりに観返しました。個人的にはアリだと思いますが、やはり「ターミネーター2」には及ばないといったところでしょうか。
「タイム」も観ました。自分が死ぬという当たり前のことを画面を通して突き付けられた感じです。本気で「あ、自分は(誰もが)いつかは死ぬんだ」と。そして、これも「エリジウム」のように、格差社会を取り上げている作品。
「アイ・ロボット」は、管理社会の恐ろしさを描いた作品でしょうか。ロボットが自我に目覚めるという点では、ターミネーターと同じ。ロボットと人間の共存は可能か。
「A.I.」という懐かしい作品も観返しました。昔に観たので、結末の記憶が曖昧でしたが、思わず目頭が熱くなりました。これは、他の作品とは少し違った観点で観ました。ロボットと人間の共存が一つのテーマですが、「愛すること」についてロボットを通して、人間自身がもう一度見直さなければならないと思います。
クローン人間がテーマの「アイランド」も面白いです。まさに倫理問題。今の技術をもってすれば、クローン人間も可能なんじゃないですかね。今の自分がクローンではないと、どうやって証明する?
フィクションはフィクションですが、人間の本質的な部分に迫れるSF作品。
たかがSF、されどSF。
A.I. Trailer (Extended Version) - YouTube
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人が人である理由が 人の中にしかないのなら
明け渡してはいけない場所
それを心と呼ぶんでしょ
(amazarashi 『古いSF映画』)
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14歳からの社会学: これからの社会を生きる君に (ちくま文庫)
- 作者: 宮台真司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/01/09
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