世の中へ出てゆけば、たちまち、俗衆と同視せられ、毀誉褒貶の口の端にかかって、身も名も汚される

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「石を玉と見せようとしてもだめなように、玉を石と仰せられても、信じる者はありません。いま、先生は経世の奇才、救民の天質を備えながら、深く身をかくし、若年におわしながら、早くも山林に陰操をお求めになるとは―――失礼ながら、忠孝の道に背きましょう。玄徳は惜しまずにいられません」
「それはどういうわけですか」
「国みだれ、民安からぬ日は、孔子でさえも民衆の中に立ちまじり、諸国を教化して歩いたではありませんか。今日は、孔子の時代よりも、もっと痛切な国患の秋(とき)です。ひとり廬にこもって、一身の安きを計っていていいでしょうか。―――なるほど、こんな時代に、世の中へ出てゆけば、たちまち、俗衆と同視せられ、毀誉褒貶の口の端にかかって、身も名も汚されることは知れきっていますが―――それをしも、忍んでするのが、真に国事に尽すということではありませんか。忠義も孝道も、山林幽谷のものではありますまい。―――先生、どうか胸をひらいて、ご本心を語ってください」
 再拝、慇懃、態度は礼をきわめているが、玄徳の眼には、相手へつめ寄るような情熱と、吐いて怯まない信念の語気とをもっていた。
「…………」
 孔明は、細くふさいでいた睫毛を、こころもち開いて、静かな眸で、その人の容子を、ながめていた。


吉川英治三国志(四)』「孔明の巻」354頁−355頁。講談社)

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最近、パソコンの調子が悪く、ブログを更新できませんでした;

モデムが逝かれたようです。

そろそろ、新しいパソコンに変えようと考えていたところでしたし、
無線でネットに繋げたいな〜という願望もあったので、
この際、変えちゃえ、買えちゃおう!ということで、
パソコンを新しく購入する方向で進んでおります。

現在、WiMAXでネットが繋がるかどうか、USB型のWiMAXでレンタルお試し期間中。

田舎に住んでいるので、心配でしたが、無問題です!

いや〜それにしても、便利な世の中になりましたね。

気を抜いていると、浦島太郎状態になってしまいます。

スマホ然り。


さて、このような激動の時代にあって、何を信じて生きていくのか、が重要な問題になってくると思います。

三国志でも、様々な士が、主を間違えたために、その才気を発揮できず、敗北し、また無念な死を遂げています。

「こっちの主人に仕えないか」と強敵を惑わし、味方に巻き込もうとする戦略も多々あり。

誰を先生にするのかは、現代でも大きな事。大事だと思います。

思春期・青年期にどんな人を師事したかによって、その人自身の人生に大きな影響を与えますから。

幸い、ボク自身は、小学校から高校、大学と、尊敬できる先生に出会えたと自負しているので、このことだけでも、すでに生きる意味を見出していると言えるので、幸せ者です。

まぁ、これも弟子の受けとめ方次第ですけどね。

しかし、現代には、カネ目的で悪いヤツはいます。

騙される方が悪いと言えばそれまでですが、

やはり、ボクら個々人が判断を誤らないためにも、自分で考え、判断していく力は身につけていったほうがいいと思います。


三国志』も4巻を読み終え、5巻に突入です。

やっと、孔明が登場してきました!

玄徳の三顧の礼

玄徳の執念というか、信念には目を見張るものがあります。

孔明を軍師にしたいという強い想いが、関羽張飛らにも伝わり、孔明自身の心も動かした。

ここでは、玄徳の孔明に対する強い想いが印象的でした。

師は、待っていてもやってきません。

自ら求めていかないと、師事する人は現れないということですね。

そして、師の偉大さを世に証明していくのも弟子の一念によるものです。

でなければ、孔明は、世に知れ渡ることもなく、山林の中で一生を過ごしていたかもしれません。

要は、弟子側の姿勢が重要だということです。

中学時代、バスケ部でしたが、
テキトーな練習をしていれば、先生は見てくれませんでした。教えてくれませんでした。試合のベンチにも入ってもらえませんでした。
監督が一生懸命教えても、選手にやる気がなければ、教えても意味がない。
ということです。

まさに、選手の積極的・主体的な姿勢が求められました。


師弟関係って、こういうものだと思います。

そして、師はもちろん、弟子にも
「世の中へ出てゆけば、たちまち、俗衆と同視せられ、毀誉褒貶の口の端にかかって、身も名も汚されること」
を覚悟の上で、社会に打って出なければなりません。

ましてや、日本は“出る杭は打たれる”社会ですから。

打たれ強い人間になりたいと思います。

“凹んでもへこたれず”の精神です。


孔明も登場し、いよいよ「三国志」が面白くなっていく段階ですね。

今週末は、秋期スクーリングですので、その予習もしつつ、

三国志』という教科書も学んでいきたいと思います。


では。


ps.
本格的に寒くなってきましたね。
くれぐれも風邪を引かないように、体調管理には気をつけていきましょう!!


三国志(4)(吉川英治歴史時代文庫 36)

三国志(4)(吉川英治歴史時代文庫 36)