全員が、野球をするのが楽しくてしょうがない、という雰囲気でまとまっている
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「オーナー。今日はいい試合ができるよ」
隣でキャッチボールをしている佐藤博行が声をかけた。
「監督さんもそう思いますか。みんな気合が入ってますよねえ」
「今日は全員が、野球をするのが楽しくてしょうがない、という雰囲気でまとまっている。やっとジンルイズのカラーができたという気がするなあ」
「チームのカラーですか」
「そう。チームがひとつにまとまってカラーができると、チームとしての不安がなくなる。のびのびと野球がやれるんだよ。だから今日は勝っても負けても充実したいい野球ができるよ」
「チームとしてのびのびと、ですか」
「うん。草野球チームとして最高の状態だなあ」
「監督さんにそういってもらえるとうれしいですねえ。勝つためにチームを結成したのではないですけど、今日は何か、勝ちたいって気分です」
「今日はもう、オーナーは勝ったんだよ」
「え? どういうことですか?」
吉見高志は鈴木誠からの送球をキャッチして佐藤博行を振り向いた。
佐藤博行は宮脇志保にボールを投げてから吉見高志に笑顔を向けた。
「みんなうれしそうだろう? 全員が、野球をするのが楽しくてしょうがないって笑っている。草野球チームのオーナーとしてはこれ以上の勝ちはないよ。立派な勝利だ。最高の勝利だよ」
「でも私は何もしていませんよ。みなさん一人一人が楽しそうなだけじゃないですか」
「この九人のいいメンバーを集めた。全員が野球が楽しくてしょうがないと見えるチームは、作ろうと思っても作れるものじゃないよ」
「でも、自然に九人になっただけです。残ったメンバーでいいと思ったから、補充はしなかっただけです」
「何人だろうと、草野球は試合に勝っても、野球が楽しくないというチームは負けなんだよ。試合に負けても楽しいと思えるチームが勝ち。だからオーナーはもう勝ちなんだ」
(川上健一『ナイン』「第3章 背負うものと笑顔と」264-266頁、PHP文芸文庫)
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あっという間に3月。
昨日は、6年生送る会が行われました。少し遅い開催かな。
5年生たちが休み時間を割いて、準備に動き、楽しい企画を考えてくれました。本番では、全校で楽しい思い出を作ることができました。
先生方の出し物も成功(?)で、盛り上げることができたと思います。先生たちの出し物は、「ヒゲダンス」 そう、あの「ヒゲダンス」です。
傘を掌にのせてバランスをとったり、グレープフルーツ・みかんを投げて、刺したり。
僕は、6年担任の先生に、みかんを投げる役でしたが、本番では失敗;練習では見事に刺さったのですが;
まあ、子どもたちのたくさんの笑顔をとることができた6送会でした。
最後は、6年生たちがお礼にと、英語での劇をしてくれました。「桃太郎」を英語で演じていましたが、素晴らしい! さすが6年生だと思いました。みんな堂々と演じておりました。
6送会も終わり、体育館は卒業式モード。
卒業式の練習も始まります。
子どもたちと過ごす時間も、あと1ヶ月も、ない。
そして、本校は、今年度で105年の歴史を閉じます。来年度からは、3つの小学校が再編し、新しい小学校としてスタートします。
閉校記念式典・記念行事の準備も進めつつ、学年末の慌ただしい時期です。
普段より忙しさも増し、あっという間に過ぎていく3月も、例年以上に早く過ぎていく感じでしょう。
きっちりと締め括りたいですね。
ps,
先輩からお薦めされた本『ナイン』読了。
面白いよ。と薦められましたが、本当に面白かったです。
草野球チームの話ですが、メンバーが個性的で、それぞれの生い立ちや背景が野球と繋がっていて、野球を“楽しむ”ことで、それぞれの生活の上で、信じられないような奇跡を生み出していく物語。
メンバーは、二十歳の運動神経抜群でファインプレーも飛び出すが、力のコントロールができず、あらぬ方向へ暴投、エラーも飛び出す青年から、第2次世界大戦で戦友を喪った81歳のおじいちゃんまで。ラーメン屋の店長、会社の社長、外国人・・・。
本当にこんなメンバーで勝てるのか? という感じですが、これは「草野球」の物語。
野球を「楽しむ」ことが全て。とんでもないエラーや失敗も笑いのタネ。賛否両論ありますが、本来のスポーツのあり方がこの物語に隠されているように思います。
「奇跡」は「運」とも言われるかもしれませんが、その「運」でさえ、「努力」なしには生まれませんし、「信じる」ことが大前提となります。
「信じる」ことができるから「努力」できるし、また「楽しむ」という本来の活動の目的を見失わない限り、「奇跡」はすぐ傍にあるということでしょうか。
「楽しい」ところに、人は集まる・・・。