あなたの生命力の根源は、あなたご自身のなかにあるんですよ

f:id:mind1118:20130803190315j:plain

 

-----

 

ベラルド あの先生がなんと言おうと、関係ないじゃありませんか。神さまのお告げじゃあるまいし。あなたの話を聞いていると、まるでピュルゴン先生があなたの命の綱を握っているみたいですね。至上の権力を行使して、あなたの命を長くするも、短くするも、あの先生の思いのままというわけですか。考えてもみてください、あなたの生命力の根源は、あなたご自身のなかにあるんですよ。

 

 

モリエール鈴木力衛訳 『病は気から』「第三幕」97頁、岩波文庫、1970年)

 

-----

 

この本は、「自分のは病気だと思い込んでいる男」のお話。その男アルガンは、かかりつけの医者ピュルゴン氏や、薬剤師フルーラン氏に頼り、自分は薬がないと生きていけないを思い込んでいる。そのため、ピュルゴン氏やフルーラン氏にいいようにされている。

アルガンの娘アンジェリックは、クレアントの恋人であるが、アルガンは医者の息子トーマ・ディアフォワリュス氏と結婚させたいと強く願っている。自分にとって婿が医者であると好都合であるし、財産もたんまり入ってくる。その財産を狙っているのが、アルガンの後妻ベリーヌであり、アルガンの命よりも財産を狙っている。

頑なにアンジェリックとクレアントの結婚を認めず、医者の息子と結婚させようとしているアルガン。アンジェリックに協力し、あれこれ小芝居を交えながらなんとかアルガンを正気にさせ、アンジェリックの真の恋人との結婚を成就させようとするのが、女中のトワネットと、アルガンの弟ベラルド、そして恋人のクレアントである。

 

お父さんに娘の結婚を納得させるために、周囲の人たちが協力して芝居をするという吉本新喜劇のような展開ですが、これは実際に舞台で上演もされている作品であるそうで、本書を読みながら、舞台で演じる役者たちの姿が想像でき、面白く読めました。

アルゴンは、なかなか自分は病気ではなく、実は健康体であることを信じようとはしません。現に元気に動き回っているのは、薬のおかげだと言うのです。

さて、どうしたものか・・・。

 

娯楽として読める本です。

 

人間の生命力は、病によって弱まるのか、それとも生命力が弱まるから病にかかるのか。

実は、後者じゃないかなと思ったりもするわけです。

また病気にかかった時も、生命力を高めることで、病を克服したり、あるいは薬の効果を上げる作用があるのではと思ったり。同じ薬を服用するにしても、生命力が弱っている人と生命力を高めている人では、おそらく効果が違うのでは、と思ったり。

まぁ、単純に考えて、医者で治せるものなら医者にかかればいいのであって、医者でも手におえない大病の場合には、自身の生命力をどうするかという人間の内面の問題に転換することが大切なのではと。

 

「風邪を引けば、寝込むのが一番いい」と誰かが言ってましたが、あまり薬に頼ることはしない方が自然であるし、治癒力を高めるためにもその方がいいのかもしれません。病の種類によりますがね。

 

 

f:id:mind1118:20130805195929j:plain

 

 

病は気から (岩波文庫 赤 512-9)

病は気から (岩波文庫 赤 512-9)